ベッドの上に寝転び、二人の会話を思い出してみるが、私には謎だらけだ。

 まず、こんなに一緒にいるのに、私は海里さんの事を全くしらない。


 トマトが嫌い、ウインナーが好き。

 海が好き。

 でも、どこで生まれ、どこに住んでいるのだろう? 

 仕事は? 家族は? 

 知らない事ばかりだ。

 でも、パパは知っているみたいだった。


 凄く知りたいけど、知っちゃいけないような……

 私の知らない海里さんが居るみたいでなんだか怖い…… 


 頭の中がぐちゃぐちゃして眠れない。

 それに、リゾートホテルの事って? 

 店の事? 

 一体なんなんだろう?


 海里さんは、店を辞めてしまうのだろうか?



『ねえママ? ママは知っているの? 私には何で教えてくれないんだろう?』


 あまり眠る事ができないまま朝が来てしまった。


 店の窓を開け空気を入れる。

 パパはいつものように、朝早くから出かけて居ない。


 海か市場だろう……



 テラスに出て、大きく海からの風を吸い込む。

 そして、岸へと目を向けた。

 朝日の中に一つの黒い人影、海里さんだとすぐに分かった。


 夕べのパパとの会話が気になるが、今日も変わらず波に乗っている事にほっとした。


  

 ガヤガヤと数人が海から上がる姿が見えた。

 いつものように髪を一つに束ね、モーニングの準備にキッチンへと入る。




 朝食が済むと、海里さんがいつものようにテラスのテーブルに座った。

 ホットコーヒーをトレーにのせ、テラスへと出た。

 テーブルにカップを置くと、海里さんはすぐに手に取り口へと運んだ。


 私は、いつもの場所から海を眺めた。


「あっ」


 思わず声が出てしまたった。