彼は、戸ノ内といい、すでに退職し家で隠居生活を送っていた。彼は、俺を快く迎えてくれた。

 リゾートホテルの当初の姿を知りたかった俺に、何枚もの写真やパンフレットをみせてくれた。時代を感じる写真の数々ではあったが、今の近代的なものまねホテルでは無く、南国をイメージしたリゾートホテルであった。


「現在のホテルと、かなりイメージが違いますね」

 俺は、丁寧に写真を見ながら言った。


「そうですか? 私は、ホテルが人手に渡ってからは、一度も拝見しておりません」

「そうでしたか……」

「このホテルは、先代がハワイをそのまま日本へという想いで作ったものです。ですから、植物の管理には本当にコストと手間がかかり大変でした」

 戸ノ内さんは、懐かしそうに写真を眺めながら言った。

 ハワイか…… それで、ホテルのあちらこちらに、持て余した空間があったのか?

 昔の写真をみると、とても、居心地の良いホテルであった事が伝わってくる。


 そして、アルバムを捲った先の写真に、一瞬目を疑った。


 「この写真は?」