「やっぱりここか」

 背中からの声に振り向いた。
 海里さんは、立ち止まってじっと私を見つめた。

「綺麗だ…… やっぱり奏海は青が似合う」

「えっ。これ、海里さんからなの?」

 だから、ブレスレットとのバランスが良かったんだ。


「ああ。俺が渡しても素直に着ないだろうと思って、美夜さんに頼んだんだ」

 海里さんに、熱い目で見つめられ、恥かしくなる。


「海里さん、こんな所に来てていいの。誰かに見つかったら困るでしょ」

「別に…… やっぱり、ここは気持ちがいいな。まあ、奏海の店には負けるけど……」

 海里さんは、私の横に並んでテラスから海を眺めた。
 遠くに、うちの店が見える。

「ううん。私、ここ凄く好き」

「そっかぁ」

 海里さんは嬉しそうに笑った。


「おお、ここにいたのか?」

 パパもテラスに出てきた。

「どう思いますか? このホテル。俺の本気です」

「まあ、いいんじゃないか」

 パパは、海を見ていた目を海里さんに向けた。


「認めて頂けますか? 約束通り、背負わせて頂きますから……」


「俺は、まだ、何もいっとらん」

パパが、じろっと海里さんを睨んだ時だ、


「颯太!」

 ロビーの方からパパの名を呼ぶ声に振り向いた。