檀上には、ホテル開設に立ち合った人達の短い挨拶が行われた。
 海里さんも、檀上の前へと行ってしまった。

「ホテル建築デザイン、島田勇太様」

 えっ?
 思わず檀上を見上げた。ユウちゃん、建築家だったの?


 そうか……
 だから、こんなホテルが出来たんだ。海里さんとユウちゃんの思いがいっぱい溢れているように感じた。うちの店を好きな二人が作ったホテルに心の底から感謝した。


 私は、ユウちゃんのあいさつが終わると、ホールから出てロビーのテラスへと向った。

 さっき、立った時にも感じた、ふっと風の吹く感覚と海の眺めは、うちの店のテラスに似ているからだろう?


 春の海からの暖かな風を感じ目を閉じる。海里さんと初めてあった時の事を思い出す。なんて、凛々しく綺麗に波に乗るのだろうと思った。でも、次に見た時は、ひどく酔っていて波に乗った姿に、私は慌てて海岸に向かった。凄くイライラして、初めて会った人にピンタしてしまった。

 私は思い出して、ふっと笑った。
 でも、あの海里さんが、今日の海里さんになる。
 きっと、言葉では表せない苦労があったのだろう……

 そして、私は、どんな海里さんも愛し続けるだろう……