「これより、志賀グループ、リゾート開発部経営方針会の発表を始めさせていただきます」

 えっ!
 志賀グループ? 
 どういう事なのだろう? 
 頭の中がパニックになってる。


「志賀グループがこのホテルを買収したんだ」

 ユウちゃんが私に耳打ちした。

 私は、驚いてユウちゃんの顔を見た。だが、驚くのはこれだけじゃなかった。

 志賀グループの社長、海里さんのお父さんの挨拶から始まった。海里さんに目がよく似た、貫禄ある凛々しい人だった。


「続きまして、志賀グループ、リゾトート開発部、部長志賀海里による、経営方針の
発表に移させて頂きます。


『えっ!』

 心の中で、大きな悲鳴を上げた。


 ぶ、部長!
 海里さんが部長!

 そうだ、こんなホテル海里さんにしか作れない……
 あの店を、あんな風にホテルから見せる事が出来るのは、海里さんしかいない。

 私の目から、自然と一筋の涙が落ちた。

 檀上に上がる背中を見つめる。
 くるりと向きを変えた姿は、間違いなく海里さんだった。
 檀上に立ち、スポットライトを浴びた海里さんは、凛々しくて眩しかった。


 堂々と、この大勢の前で説明する海里さんは、スマートでありながら、分かりやすい説明と、時々見せる厳しい表情は、本当に人の前に立つふさわしい人だと思った。