「おーい。やっと来たか」

 ユウちゃんの声に我に返り、息を大きく吸い込んだ。
 ユウちゃんのスーツ姿なんて、私は始めてみた。

「ユウちゃん、カッコいいよ」


「ふっ。かなちゃんも、めっちゃ綺麗だ。完璧だ。」


 私は、コートをホテルのスタッフに預け、ホテルを見て回った。
 宿泊ルームも落ちついていて、テラスからの海の眺めに息を呑む。

 確かに、リメイクされ綺麗なのだが、ホテルのあちらこちらに、昔のままのような石段や大きなな木があり、それがホテルの暖かい雰囲気を出していた。

 そして、小さく流れるBGMはハワイアンで、まったりと気持ちを落ち着かせてくれる。

 開放的なレストランや、南国を思わせるバー。幾つものショップも並び、大浴場も充実していた。ビーチの反対側の海には、ディナー用のクルーズや潜水艦まで停まっている。ホテルでの滞在に飽きない事を感じさせる。

 経営方針会の開始を報せる館内アナウンスに、私達は大ホールへと向った。ホールの入口には、ホテルのスタッフが並び、深く頭を下げる。
 ホールには驚くほどの人が集まっており正装した艶やか人達ばかりだ。絶対に私は場違いな場所にいると思う。

「大丈夫よ。堂々としていなさい。奏海は誰よりも綺麗だから」

 美夜さんは、私の不安を察したのだろう。ウインクして私の背中を軽く叩いた。


「ほらみろ、チラチラかなちゃん見ている男が居るぞ。俺から離れるなよ」

 ユウちゃんも、大丈夫だというように私を見た。


「うん」

 私は、二人の言葉に、すっと背筋を伸ばした。

 同時に、ライトがくらくなり、司会者の方へスポットライトが当たった。