私の好みはクズなんだってば。

「寒川くんさっきぶり!待った?」

「いや、俺も今来たとこ。じゃあ行こっか」

飲みかけのコーヒーを手に席を立つ。すると、3つ隣の席の新聞から見知った顔が顔を出した。

「あれ、唐橋さんに…寒川?珍しい組み合わせだな」

「あれ、柳。どうしたのこんなとこで、昼間っから新聞読んでおじさんみたい」

「おじさんみたいとは失礼だなー、俺だってこんなことする予定じゃなかったんだ。今頃は内川選手の試合を見てるはずだったんだぞ?」

ご立腹、という様子で新聞に顔を埋める柳。

「でた!もしかして、剣道の試合観戦?そういや今凛と里崎も行ってたはずだわ、昼誘ったらそう言われた」

「そーそーそのお二人さんのせいで俺は今こうしてるんだー!いやいいよ!俺は恋のキューピットになったんだー!!」

「なにそれ、わけわかんない。ね、寒川くん?」

笑顔で振り返る唐橋さんに、そうだねと少し硬い笑みを返す。上手く笑えているだろうか。
その様子を見ていた柳が、とつぜん電撃に打たれたように立ち上がる。

「はっ…!もしかして!!」

「なっ、柳どうし…」

「お前らももしかしてデートか!?くっそ、俺だって彼女と試合見に行ったり飯行ったりしてーわ畜生!」

柳が新聞を引き裂き泣き崩れる。ちょ、ちょっと柳誤解だよ!と唐橋さんが柳に駆け寄って宥める。

昨日のこともあってやけくそな俺は、唐橋さんの手を引いて柳にとびきりの笑顔で宣言してやった。

「そ、俺今から実咲ちゃんとデートだから。」