もしも明日という未来があるのなら

「ただいま。」

「おかえり柚月。どうだった?」

キッチンからお母さんが料理しながら聞いてくる。

「うん、良くなることはないって。」

なるべく冷静に声が、足が、手が震えないように私は言う。

分かってたけど、やっぱり辛いな・・・

今日もらった結果や書類を机に置く。

「そっかー・・・」

トントントンとにんじんを切る音がキッチンに響く。

鶏肉とピーマンもあるということはどうやら今日の夜ごはんは酢豚らしい。

でも、なんか食べる元気が湧いてこない。

お母さんの料理、めちゃくちゃ美味しくてどんなときでも食べれたのに。

「私、あと5年持たないって。」

私は飲み終えたお茶のコップをシンクに置いてつぶやくように言った。

一瞬お母さんの動きが止まった。

「え?嘘、でしょう・・・?」

「ほんと。冗談で言うと思う?こんなこと。」

わざとじゃないんだけど言い方がきつくなる。

「でもこの前確定じゃないって」

「悪化してた。確定だって。」

「そっか・・・柚月・・」

お母さんの目に涙が浮かんだ。

それでも私を不安にさせないようにとあくまでも普通でいる。

「そうなの・・・柚月、もうすぐご飯だけどどうする?先にお風呂入る?」

「今はいいかな・・・疲れたからちょっと休むね。」

「ご飯は食べた方がいいよ?」

「分かってる。」

分かってる、ご飯を食べないと何事も始まらないってことぐらい。

「柚月。」

「何?」

「あとでちょっと話そう?」

「何を?なんで?」

「ほら、これからのこととか・・・」

お母さんの目が涙で潤む。

私の中でなにかがぶちっと切れた。

「ひとりになりたいの!かまわないでよ!お母さんが泣きたくなる気持ちも分かるよ?でも私はまだ生きてるじゃん。なのになんで泣いてるの!?」

なんで。

「ごめんね柚月、そういうつもりじゃ・・・」

「お母さんが泣いたら私はどうすればいいの?泣きたいのはこっちだよ!」

八つ当たりって分かってるけど。

ごめんなさい。

どうしていいか、分かんないよ。

私は叫んでキッチンを飛び出していた。