もしも明日という未来があるのなら

「野村、どした?」

押し黙った私を覗き込んでくる水村。

「残酷だなぁ、」

ぽつりと言葉が零れ落ちる。

「え?」

「あれ?あ、なんでもない!」

言葉に出てしまったみたいであわててごまかす。

「まぁ気にしないでー」

いつもの笑みを作ってうーん、と伸びをする。

言っても困らせちゃうだけだしね。

「どういう悩みか知らないけどさ、大丈夫?」

水村は優しいよね。

ちょっとした気持ちをどうして、気づいちゃうのかな。

一度その優しさに触れてしまったら、

離れられなくなりそうで怖いよ。

「水村ぁ、あんたいいやつだねぇ。」

そんなふうにおどけて見せる。

「マジどした?なんからしくないっていうか・・・」

「あはは、そう?なーんとなくだよ。」

ほら、そういうとこ。

優しくしないで、水村を傷つけたくないの。

私の心も苦しい。

ぎゅうって締め付けられるみたいに。

「・・・泣きたいときは泣けば。」

水村が体育座りをして前を見たまま言った。

なんかそれ、前も聞いた気がする、屋上で。

でも、泣きたくても泣けないよ。

私、今、幸せだから。

楽しまなきゃ、損でしょう?

にこっと笑って水村を見ると困ったような表情。

「辛く、ねーの・・・?」

辛くないよ、正体が分かってるから。

そうでもないんだよ。

「全然、むしろ幸せ?」

お母さんとお父さんがいて。

海月や蒼木がいて。

水村がいるから。

「なんで疑問形なんだよ」

ちょっと水村が笑う。

そういう笑顔が一番似合ってるよ、水村は。

私は笑って卓球のラケットを手に取った。

「ほら、海月たち食べ終わってる!」

「ちょっ、野村、作戦、どうすんの?」

水村もラケット持って立ち上がる。

「なんとかなるでしょ!頑張ろっ!」

「なんとかってお前らしいな。行くか。」

私たちは笑顔で海月と蒼木のいる卓球台に向かった。