放課後。

帰ろうとスクバを肩にかけ教室を出た時。

「なぁ」

いきなり声をかけられた。

この声。

「わ、私?」

振り返ると、あろうことか水村冬馬だった。

「あー、うん。」

なんとも言えない無表情で見下ろしてくる。

えーーー、何でしょう、急に。

高校2年生5月まで一度も水村から話しかけてきたことなかったのに。

ほら後ろ!女の子たち!

こんな無表情冷徹でもモテる水村、何事?とみんなチラチラ見てくるよ。

ええーい、耐えられない。

私が守り抜きたい平穏な高校生活、水村のせいで消えたらブチギレる、と心の中でつぶやく。

「お前って俺に興味あったりすんの、」

「は?ないけど。それだけ?もう用がないなら帰るけど。」

ハテナを頭に思い浮かべながら、私は背を向けて教室の女の子たちの視線から逃げ出す。

つい即答全否定してしまったけど、しょうがない、これは緊急事態。

「なあ、ちょ、」

廊下を早足で歩いていたとこでパシッと腕をつかまれた。

「おい、」

ピキッと全身が固まる。

チラリと顔を見ると視線が冷たくて一瞬ぶるりと震えた。

「お前さ、ストーカー?」

そう唐突に聞かれた。

・・・え?

「逃げねえで答えてくんね?」

えっと・・・?