「野村、英語のノート見せて。」

水村が振り返って私に言う。

席替えで水村の後ろの席になった私。

なったときはものすごくうれしかったのに。

話す機会が増えてたのしかったのに。

今はその何気ない日々がなくなりそうで。

思い出が増えれば増えるほどこの日々を手放したくないって思う。

好きな人がこんなに近くにいるのに。

手を伸ばせば届きそうなのに。

届きそうで届かなくて、近いようで遠い。

「うん、いいよ。」

涙が溢れそうになる。

だからそう無理やり笑顔を見せて言うしかない。

窓からの景色が切ないほどにきれいだ。