ズンチャズンチャ

次の日の夜9時。

部屋でマンガを読んでいた俺に電話がかかってきた。

電話なんて、めずらしい。

誰だろう?

スマホをみると知らない番号だ。

「はい。」

知らない人、という警戒心によって俺の声が低くなる。

『やっほー、私だよ、私!』

ノーテンキで明るい声がスマホを通して聞こえてくる。

すぐに分かった、野村だ。

心なしか声が柔らかくなるのが自分でもわかる。

「野村だろ、何?」

『そーだよ。よく分かったねぇ。』

あはっと野村が笑う。

「元気すぎだろ、お前。ってか、いつから詐欺師になったわけ?」

『はあっ!?』

「私だよ、私!ってオレオレ詐欺の一種だろ。」

私だよ、私!を野村っぽい声で言う。

すぐにきもっ!とツッコミが入る。

『勝手に人を詐欺呼ばわりするな!てか、そんな声じゃないし。でさ、』

「ははっ、うん。」

『今週の日曜日さ、海行こうよ!』

「・・・ん?」

『だーかーら、海行こ?』

「・・・はっ?」

『近いじゃん。自転車でパッと行こうよ。』

確かに近いけど・・・

『ん?それとも水村泳げない?泳がなくてもいいからさぁ』

「勝手に決めつけんな、泳げるし。」

『最近暑いしさー。』

俺も海は好きだけどさ、女子と海に行くようなキャラじゃないんですけど。

『楽しそうじゃない?』

「やだよ。デートみたいになるじゃねーか。」

『・・・?水村、二人で行くとか考えてんの・・・?』

・・・え、他に誰が行くんだ?

「いや、お前がだれと行くって言わなかったから・・・」

『二人で行くとも言ってないんだけどな。』

と野村が笑う。

「決定ね!日曜日の10時に駅で待ち合わせ!じゃ、また!」

ブツッと電話が切られる。

・・・はぁぁぁぁ。

海だって。

普通に嬉しくて頬が緩んでしまう。

しかたない、行ってやるかぁ。

ってか、結局誰と行くんだよ・・・