もしも明日という未来があるのなら

「私ね、最高の人生を送りたいの」

棚に視線を落としたままりっちゃんは言った。

「私もゆずみたいに華の高校生活送りたかったよ。入院中に山ほど漫画読んで高校にものすごく憧れてたんだもん。授業中の先生の雑談に笑って、移動教室で友達と遅れる!って言いながら廊下走って、クラスマッチで負けて大泣きして、友達と制服で放課後カフェに言って、彼氏と待ち合わせして学校に行く、たまには授業中に寝て怒られる、そんな何十万という人が経験する何気ない、当たり前の毎日が、私は羨ましくて羨ましくてたまらないよ。でもね、」

ほんの少し目を潤ませて優しく私をみた。

「じゃあ、今の私にできることってなんだろう、何がしたいんだろうって考えて、ひとつずつやってみることにしたの。叶わない夢はみても苦しいだけだから、私が幸せに生きれる方法を探したの」

りっちゃんのまっすぐな視線は確かに私を見ているけど、

もっと遠く、はっきりと希望に溢れた未来までもを見ていた。

痛い、痛い、痛い。

りっちゃんの視線が痛い。

何も前に進めず止まって、これ以上傷つくことを恐れている自分が憎い。

水村や海月に受け入れてもらおうとして、また傷つくのが嫌で、怖い。

私だって自分自身の死を受け入れられないのに、

他人が他人の未来の死をどうやって受け入れる準備をしろっての?

だからこのままでいいんだよ、と自分の行動を正当化しようとしている自分が嫌い。

「りっ、ちゃ、、ごめっ」

震える声を抑えながら私は小さく断りを言ってりっちゃんの病室を出た。

りっちゃんは強い。

本当の意味で強いから、私はりっちゃんの足元にも及ばないから

だからりっちゃんと一緒にいると動き出せない自分自身に焦ってしまっている。