「柚月。」

「・・・」

「柚月、カーテンくらいあけようよ。」

「うるさいなあ、もうほっといてよっ。毎日毎日・・・!」

ふとんをばさっと頭からかぶる。

お母さんが部屋から出て行く音を聞いてから私は顔を出す。

起き上がって洗面台の鏡をのぞく。

「ふ、あはは、」

自虐じみた乾いた笑いがひとりの部屋に響く。

我ながら、ひどい顔。

髪の毛ぱさぱさ、顔もむくんでるし、目も腫れている。

入院してからはや一週間。

自分の感情をコントロールする方法を見失っていた。

なっちゃん先生も心配してくれて

看護師さんが声をかけてくれたり、

カウンセリングの人が来てくれたりもした。

でも、なにも話せなかった。

話すのが苦しくて、唇をかむので精いっぱいだった。

どうしたらいいのか分からずに

感情だけがむくむくと膨らんで抑えきれずにいる。

分かってる、お母さんとお父さんがいなきゃ

私は治療も受けれないし入院も出来ない。

さらに個室にしてもらって、相部屋よりうんとお金がかかってる。

感謝しないといけないのに、わかってるけど

どうしようも出来なくて、そんな自分に腹が立つ。

海月を傷つけた。

蒼木も巻き込んで、ひどいこと言ったのに

最後まで心配してくれた水村の手を振り払った。

自分からみんなを突き放したのに。

発作が起きるのが先か、それともドナーが見つかるのが先か。

不安だけが私を支配する。