もしも明日という未来があるのなら


「蒼木なんか今はいいよ!そんなに必死に隠すことなの?」

「なんで海月にそんなこと言われないといけないのよ!」

「なんなのよ!もう、知らない!柚月のこと、嫌い!」

嫌いと言われて私は血がガッと頭に登るのを感じる。

今まで何度もケンカしてきたけどすぐに仲直りしていた。

そのケンカで一度も嫌いと言ったことはなかったし、

海月に言われたこともなかった。

「何それ!」

ぼろぼろと涙があふれてくる。

海月にはじめて言われた嫌いは、あまりにもダメージが大きかった。

何で、海月にこんなに言われないといけないの。

「私だって海月のことなんか嫌いっ!大っ嫌い!」

美人で勉強も出来て、なにより健康で。

毎日、死におびえることだってない。

一番近くにいたから、海月の良さを知ってるから、

海月がずっと羨ましかった。

それでも海月が好きだから、大好きだから

海月の笑顔を守りたいから、傷つけたくないから、

病気のこと、隠してきたのに。

「海月に私の気持ちが分かるわけないっ!」

思いっきり叫んだ後に聞こえたのは

「野村ちゃん、言い過ぎだよ。」

というひどく冷静な蒼木の声。

急激に頭が冷えて行った。

蒼木が、私だけを責めたことに、

もう怒りをぶつける気力もなかった。

流れていた涙はいつのまにか止まり、枯れている。

なんか、疲れた。

「海月だって隠し事の一つや二つくらいあるでしょ?ないの?」

「それとこれとは違うじゃん。」

「何が?どこが違うの?」

「私結構前から柚月がなんか悩んでるんだろうなって知ってて心配だったんだよ?頼ってよ」

はは、と乾いた私の声。

「野村ちゃん、」

「・・・やめてよ。」

どうせ、いなくなるんだから。

もう、いいよ。

最後の別れがこんな最悪な形でごめんね。

かばんをつかみ教室の扉の方へ歩き出す。

出た扉のすぐ隣に水村が立っていた。

通り過ぎようとしたら腕を掴まれる。

「野村、」

「離してよっ!」

私はその手を思いっきり振り払う。

ごめんね、ばいばい。

心の中で呟き、私は一人で学校を離れた。