もしも明日という未来があるのなら


「あ、そろそろだ。行くよ。」

エンゼルフィッシュを眺めてたらふいに水村に手を引かれる。

「え?どこ行くの?」

呼びかけてもスルーされてスタスタと連れて行かれる。

「ねぇ水村ー、ん?」

そのまま大きなドアの向こうの手前の方の席に座る。

『みなさーん、こんにちはー!』

元気な声とホイッスル。

ざっぱーんと水飛沫をあげながら登場したのはイルカ。

「イルカショー!?すごい!」

嬉しくてさらににっこりしちゃう。

「野村ってイルカみたい。」

イルカショーを見ながらぽつりと水村が言う。

「その心は?」

「いつでも明るくてみんなの人気者って感じ。」

「何それ、褒めすぎー。」

そんなにできた人間じゃないよ私。

イルカショーを満喫した後は

お土産店でお互いに何か買おうってことになって

水族館内にあるお土産屋さんをぐるぐるした。

何がいいかなと悩みに悩んだ挙句、

私がいなくなっても寂しくないように

という気持ちをちょっとだけこめて、

私はシロクマの抱き枕をプレゼントした。

真っ白で優しいシロクマさんが水村を癒してくれることでしょう。

水村はシルバーのイルカのネックレスをくれた。

ガラスがきらきらとしててめちゃくちゃ可愛い。

水村からの、最後のプレゼント。

すごく嬉しかった。

交換した後中身を見て

水村はこれどーやって持って帰るんだよって嘆いてて。

ゆっちゃんって名前だから可愛がってあげてね、

と笑顔で言うと、はー?!と叫びながら笑ってた。

れきっとした男子高校生の水村が

ゆーちゃんってシロクマ抱きしめるのを想像したら

おかしくておかしくて私は声を上げて笑う。

ゆーちゃんって名前、柚月から取ったんだよ。

ほんとは全部消し去って水村から離れたいけど、

これくらい、いいよね。

やっぱり、死んでも忘れないでほしいって思っちゃうから。

気づけばもう夕方で辺りは暗くなり始めていた。

最近、どんどん暗くなるのが速くなる。

時間が進むのも、すごく早い。

今日だって、楽しすぎてほんとにあっという間だった。

すごく楽しくて幸せで。

幸せすぎて、なぜかどうしようもなく

泣きだしそうになった。