もしも明日という未来があるのなら

夏休みが終わり、9月になっても夏の暑さはまだ続いている。

検査で病院に来たらりっちゃんと会って、私たちはそのまま屋上に向かった。

今日の空は雲一つない快晴で、やっぱりきれいだ。

二人でうーんと伸びをする。

でも、りっちゃんの表情はどこか暗かった。

何かあったのかな・・・

「ねぇ柚月。」

「うん、どしたの?」

「今日の朝ね、小児病棟に入院している小さな男の子がね、死にたくないよ、死ぬの怖いよ、って泣き叫んでたの。」

あー、私も見たことある。病院ではよく目にする光景。

「みんな死にたくない、死ぬって怖いって言うの。」

「うん。」

りっちゃんはこっちを見てくしゃりと笑った。

「私ね、もう諦めてるんだ、ほんとは。」

もう諦めてるんだ。

「っ、え・・・?」

諦めてるって生きることを?

死ぬことへの恐怖、ないの・・・?

死ぬことが怖くないなんて今の私には想像もつかない。

検査に来るたび、検査の結果が言われるたびにドキドキして手が震える。

りっちゃんは私よりもずっと身近に死を感じているの・・・?

「そりゃ私だって死んだことないし、死ぬことに抵抗がないわけじゃないの。だけど、死を受け入れちゃってるの。」

死を受け入れるなんて、どういうこと、りっちゃん。

さびしく、りっちゃんは笑った。

「私、余命半年切っちゃった。」

「・・・え・・・?」

私、余命半年切っちゃった。

頭の中でりっちゃんが言ったことが繰り返される。

嘘・・・でしょ・・・?

ぽろぽろと涙が零れる。

余命半年なんて、あっというまじゃん・・・

「ゆず、泣かないでよ。」

困ったように笑うりっちゃん。

ごめん、私が泣くべきじゃないのに。

「親とかは結構パニックになってた。なんでなの、とか移植以外に方法ないの、とか。それって意外と辛かったりする。それでかな、なんか私は意外と冷静だったんだ。そんな自分がちょっと怖い。」

「りっちゃん・・・」

冷静なんて悲しいこと言わないで。

りっちゃんは空を見上げてつぶやく。

「あと何回、こんな風に空を見上げれるのかな。」

ポニーテールが風に吹かれて揺れる。

快晴な空とは程遠い、あまりに重いことだった。

心臓病の中2の女の子。

山辺莉帆ちゃんが余命半年を切った。