突然話しかけてはきたけれど、根掘り葉掘りは聞いてこない。
変な下心無しに、本当に私を心配してくれたんだなと、彼の優しさを感じる。



「そういえば、お名前は?私は内田ゆなって言います」


また会うかも分からない。もしかしから今日きりかもしれない。
でも知っておきたかった。

ほら、一期一会って言うし。
出会いを大事にしてみようかなって。



「俺は…ミヤタ」


「なんで苗字だけ?」


まさかの返しに声を出して笑う。
そんな私に少し戸惑いを見せながらも、一呼吸置いて彼は答えた。


「ミヤタ…リョウだよ」


変な間だったな。
もしかして、名前言うの嫌だったかな。


そうだとしたら、申し訳ないな。



「あ、なんかすみません。無理やり名前聞き出したみたいになって」


「いいんだよ、嫌だったわけじゃないから。と言うか、ゆなさんって綺麗な名前だね」


タメ口だけど、名前は呼び捨てでも"ちゃん"付けでもなく、"さん"なところに誠実さを感じる。


「…ありがとうございます」


彼の醸し出す不思議で柔らかな空気感が、いつのまにか居心地いいものになっていた。