「…俺、俺だよ。
翔太郎だよ」
「…え?」
どうしてリョウさんが翔太郎の名前を知っているのかわからなかった。
そもそも"リョウ"という名前は偽名で、本名が"ショウタロウ"ってこと?
頭がついていかない。
彼が何を言っているのかわからない。
「何を言っているの?
あなたは誰なの?」
「丸山…翔太郎」
言葉が出なかった。
目の前にいる彼は、リョウさんではなく、私が大好きだった恋人、翔太郎…?
翔太郎は事故で亡くなった。
その傷が癒えなくて、地元に帰ってきたんだ。
どうして?一体何が起きているの?
「俺は事故で死んだ。大好きなゆなを残して。ゆなは泣いていた。俺が大好きだった笑顔がなくなっていた。だから心配で、ずっと見てたんだ」
亡くなった翔太郎が喋ってる。
でも、目の前にいる彼は別人。
何…何なのこれ。
「ゆなが前を向けるように背中を押したかった。少しでも元気を与えたかった。でも、死んだ俺にはそんなことはできなかった」
ねぇ、これって、もしかして…
「そしたら、ちょうどこの公園の、あそこの階段で」
彼が指差す方に目を向ける。
段数は少ないが、園内に段になっている部分がある。
そこの階段を指していた。
「あの辺りで気絶していたこの男の体を借りたんだ。多分、踏み間違えて頭がどこか打ったんだ」
糸が繋がった。
とても非現実的で到底想像し難い真実。
だけど、それが現実に起きたんだ。
翔太郎の魂が、他の人の体に移りこんだんだ---…