それからの私は、まるで生きている心地がしなかった。


5年続けて後輩にも色々教えられるようになったのに、初歩的なミスが続いてしまった。


"恋人を亡くした可哀想な社員"



だから、仕方ない。そう言われているのも耳にすることもあった。


さすがにまずいと思ったのか、上司が有給でしばらくお休みの期間を作ってくれた。


私は帰省することにした。


地元に戻ったのは、翔太郎の葬儀以来だ。


私がここに帰ったって、翔太郎はいない。
もうどこにもいないんだ。




電車を降り、東京とは違う柔らかな風が頬をかすめる。
すーっと大きく息を吸い込み、深くゆっくり吐いた。