「びっくりしたね」


その言葉の意味が、車のことなのか、抱きしめたことなのかはわからない。


「…大丈夫です」


「そっか」


抱きしめられた温もりが残る。
鼓動はおさまるどころか徐々にスピードを上げていった。


何、このドキドキ。


車に轢かれそうになったから?
ほら、よくいう吊り橋効果的なやつ。


それと似たようなもの?






リョウさんは少し私と距離を取りながら並んで歩く。

気のせいかな?さっきよりも少しだけ、彼との距離を感じた。



交わす言葉はどれも他愛ないものばかり。
それも、なんだか沈黙にうずうずした私が放つ質問にリョウさんが端的にマイペースに答えるだけのもの。


別に沈黙が嫌なわけではない。
今まで何度もあった。


でも、私のこの変なドキドキを誤魔化したくて、これに関して何も考えたくなくて。
今日ばかりは何かを喋っていたかった。


決して話し上手ではない私が投げかける質問で、たくさん言葉のキャッチボールではない。


あぁ、もっとトーク力があれば…なんて落ち込んだのは、言うまでもない。




「今日のゆなさんは、必死に話してる感じがする」


優しく微笑むリョウさん。
ほら、見抜かれてる。