「どうしようもなく悲しいことがありました。仕事なんて手につかなくなるほど。だからお休みを貰って地元に帰ってきたんです。そこでリョウさんと会いました。帰ってきて、よかったのかもしれません」


「悲しいこと…か。俺も色々あったけど、こうしてゆなさんと知り合えてよかった」


リョウさんの目線が私の手元に落ちた。


「その指輪、綺麗だね」


外せないままでいる、婚約指輪。


「…大切な指輪なんです」


「…そっか」


これ以上何も聴いてはこなかった。


この指輪を見て、何を思ったかな。



「ちょっとこの辺歩かない?ずっと公園で座ってるだけじゃ退屈でしょ」


「そんなこともないですけど…でも、お散歩するのいいかも」



思えば、リョウさんとこの公園の外に出たことがない。
もしかしたらリョウさんは、この公園に住む妖精かもしれない、なんて現実的じゃないことも考えてしまうほど、ここにいるイメージしかなかった。