それから私たちは色んな話をした。
好きな食べ物、アーティスト。
趣味も共通するものがいくつかあった。
時間も忘れ、話に夢中になっていた。
喋り倒す会話ではなくて、お互いがお互いの言葉をしっかり拾い、傾聴し合う会話だ。
私のスマホが鳴り、そこでようやく時間の経過を自覚した。
「あ、お母さん…もしもし」
『ゆな?あんな今どこ?いつ来るの?』
やばい、いくらなんでもゆっくりしすぎた。
「ごめん、すぐ帰るよー。久々に友達にばったり会って、ちょっと話し込んじゃって」
チラッとリョウさんに目をやりながら答える。
久々にの友達でもないんだけどね。
「ごめんなさい、リョウさん。そろそろ私、行かないと」
私は別れを惜しんだ。
こんなに心落ち着かせ話すことができた異性なんて、翔太郎以外いなかった。
異性としての特別な感情とかでは全くなくて、それとは違う、なんて言うんだろう。友達でもない新しい関係性って感じだ。
「また…お話しできるといいな」
また会いたい、そう思った。
「きっと会えるよ。また」
連絡先は聞かなかった。またどこかで会えるような、そんな気がした。
リョウさんと別れて、急いで帰路につく。