あの日この場所で





なんやかんやと時は過ぎ、早くも2ヶ月が過ぎようとしていた。


季節は夏の準備をはじめ、じめっとした日が増えてきた。





私はと言うと、学校もバイトも慣れてきだし、香奈のお陰で挨拶を交わす友達も何人かできた。




おばさんの親戚の子にはまだ会えていない。



バイトが始まり、夜遅くにまた待ってもらうのも悪いなと言う思いから最近は家や賄いで済ますようにしていたからだ。





今日はバイトもないし、香奈と遊ぼうかなと誘うとオッケーしてくれたので、これから電車に乗って隣町まで行き、カフェでケーキを食べるのだ。






「わぁー!美味しそう〜!」




香奈は目の前に出てきたシンプルなショートケーキを舌鼓にうち、私も大好きなモンブランを食べ始めた。




食べ終わったら二人でプリクラを撮り、カラオケに行った。




「あー!楽しかったー!やっぱり日向と遊ぶのが1番楽しいよ!」



それは本当に。私も香奈といると1番リラックスできるというか…落ち着くのだ。


「私も」



「え?今日向がデレた?デレたよね?」




キャー!なんて言ってる香奈と駅まで行くと、じゃあと言って別れた。



香奈は今年、高校進学を機に隣町に家が引っ越し、それまで近所に住んでいたが、離れ離れになってしまった。



「またねー」



向かいのホームで香奈が手を振ると、私側の電車が到着した。




電車を降りて、いつもの帰路につくと、今日はまだ空が少し紫色がかっていて、水彩画のような雲が浮かんでいた。




またいつもの横断歩道。



「あ、誰かが花を添えてくれてる…」



事故現場には、3月31日の命日から数日いつも二輪のカーネーションを添えてある。



他の人の迷惑にならないように、花が萎れる前には片付けてしまう。




なので、こうして片付けた後に添えられているのは、きっと父と母のことを覚えてくれている人なのだ。




そっと、手を合わせて心の中で誰かにお礼を言う。