「ねぇねぇ、日向!」



耳元では親友が仏頂面で私の名前を呼んでいる。



「そんな大きい声じゃなくても聞こえるよ」



もう、と香奈のいる方の耳を抑えながら言うと、



「だって!先輩にみんなが騒ぐイケメンがいるから見にいこう!って言ってるのに全然乗り気になってくれないじゃない!」



「行きたいなら行ってくればいいじゃん。私はイケメンだかしらないけど、興味ないんだもん」





そう。


昨日から新入生の中ではイケメンの先輩探しとやらをしている子も少なくないみたいで…



お昼前から物凄いイケメンがいるとの情報で持ちきりなのだ。



「私は日向と行きたいのー!」




これでもかと言うくらい腕を引っ張られ、抵抗していると、同じクラスの男の子が話しかけてきた。




「なーに騒いでんの?あー、俺は高橋悠星《 たかはし ゆうせい 》って言うの。悠星でいいから。佐々木さんと上川さんだよね?」



「そーだよ!私達のことは香奈と日向でいいからね!よろしく!」



とびっきりの笑顔で、自己紹介をする香奈には本当に感心する。




「女子が騒いでるイケメンってあれだろ?今日転入してきた…「え!!?」




転入…その言葉を聞いて、思わず立ち上がってしまった。



昨日のおばさんの話…。



ってゆーか男の子だったの!?勝手にてっきり女の子かと。



「ど、どうしたの?日向…?」



いや、でもイケメンだから見に行くってのも違うよな。



なんで色々考えていると、




「あ、先生だ。じゃあまた」



そう言って悠星くんは戻って行った。