彼から逃げるようにして来た屋上。

無意識に空を見上げる。

空は青く、雲がゆっくりと流れる。

「戻りにくいな」

きっと彼は教室にいるだろう。

そう考えていると屋上のドアが開いた。

私は反射的に振り向く。

「あ、いた」

「なんだ…マナミか」

「なんだとはなにさ!」

「ふっ、別に。何でもないよ」

来たのがマナミだと、少し安心した自分がいた。

「でも、堪太君が来るなんて思わなかったよ」

「そ、だね」

答えるのに喉が詰まる。

「昔からカッコイイって思ってたけど、イケメンになってたね」

それには答えられなかった。

「…堪太君、ヒナのこと忘れてた」

吹いた風が髪を揺らす。

「え…」

「全体のことは覚えてるんだって、遊んだこととか住んでいたこととか。でも、ヒナのことは覚えていなかった」

マナミの言葉に少し驚く。

それを聞いて私はどうすればいいのか。

「だけど、これから仲良くなっていけば!」

「そう、だね」

忘れられてホッとしているのか、ショックを受けているのか。

よく分からない気持ちになった。