「…ん?」

ふと気がつくと、私は何もない透明な空間に立っていた。

最近何度もいる場所だから、もう驚きはしない。
あぁ、また同じ夢か、と思うだけ。

そう、ここは、私の夢の中。
こんな空間が現実に存在するわけがない。

この場所は空も、地面も、見えないのではなく、無い。
最初にここに来たとき、本能でそう悟った。

この場所は、知らないはずなのに何故か怖くはない。
それどころか、ここに来ると安心する。
でも多分、それはこれが夢で自分がいる場所だとわかっているからだろう。
…そして、ここにいる間だけ素の自分で居られるから。 


夢が終わるとき、この空間は光の粒子にまとわれて消滅する。
だから今日もそろそろ空間が崩壊して自分のベッドの上で目が覚めるはず。

…けれど、今回は一向に光が現れない。

 
それどころか、心なしか空間が広がっていっている気がする。
目には見えないのだけれど、「分かる」。
…そう、まるで、空間が誰かを迎え入れているような…