仕事を早く終わらせた西園寺は、早足で自宅へと戻った。ずっとそこにいる筈の結愛に会うためだった。

「…いない」

昨夜は確かに、結愛はここにいた。

朝だって、居ることは確認してから出ていったのに。

リビングに向かった西園寺は、テーブルの上にある一枚の紙を見つけて、手に取った。

『西園寺様
昨夜はありがとうございました。ですが、ずっとここにいるのは、やはりご迷惑になるので、失礼します』

西園寺は紙を握りしめると、外に飛び出し、車を走らせた。

行く当てなどない筈の結愛。

やはり帰るのは1つだけか。

西園寺は良樹の自宅へと向かったのだが。

人がいる気配もない。駐車場にも車は止まっておらず、辺りを探し回った。

…友人の家にでも行ったのか?

いや、人に迷惑をかけるのは好きではなさそうだ。

じゃあどこに?

そんなとき、突然の雨。

しかもどしゃ降り。

西園寺は焦る気持ちをなんとか落ち着かせ車を走らせた。