…それから、どうやって家に帰ったのか、いつの間にか、私は、家のソファーに腰かけていた。

相変わらず、涙が止まることはない。

そのうち、泣きつかれて、いつの間にか眠ってしまっていた。

その夜、私は高熱を出した。風邪なんかじゃない。

きっと、知恵熱だろう。

そんな私を誰かが付きっきりで、看病してくれた。

3日間うなされて、ようやく目を覚ました私は、社長の家でないことに、気づいて勢い良く起き上がるも、ふらついて、誰かが慌てて私を支えてくれた。

「やっと熱が下がったのに、急に起き上がったりしたら、ダメだろ?」

「…」

相手を見て、言葉もでない。

「あの日、泣きながら、家にはもう帰れないと言って、俺の家に、連れ帰ったんだよ。心にすっぽり穴が開いたみたいに、ただ泣いて、しまいに熱出して、やっと熱が下がった」

そう言うと、困ったような笑みを浮かべたのは、西園寺だった。

「すみません、ご迷惑をおかけして。直ぐに出ていきますから」

そう言って立ち上がろうとしたが、止められた。

「笠原の家に帰れるの?」
「…」

「無理だろ?好きなだけいれば良い」
「でも」

「引っ越すにしても、直ぐには場所も決まらないだろ?俺はここに寝に返ってくるだけだから、全然構わない。」

「そんな、会って間もない西園寺さんの家にお世話になるなんて申し訳ないです」

「君は、優子に、似てると言っただろ?俺を兄貴だとでも思って気楽にしてくれ」

そう言うと、部屋を出ていった。