その日以来、また悠翔が突然現れやしないかと、びくつく日々。

そんな私の異変に、社長が気づかないはずはなかった。

「…結愛、何がそんなに不安なんだ?」
「そんな、不安なことなんて何も」

頑なに、本当の事を言わない私を見て、社長は深いため息をついた。

私は何も言えなくて、俯いてしまう。

「…っ?!」

そんな私を社長は黙って包み込んだ。

私は驚いていて、ただただ瞬きをする。

社長は黙ったまま、私の背中を優しく撫でる。

そうされただけで、不安が少しずつ楽になっていく。

私は、社長の胸に顔をうずめた。

「…結愛」
「なんですか?」

「結愛が言いたくないなら、無理には聞かない」
「」

「でも、結愛には、俺がいるってことを忘れないで欲しい」

その言葉に、目頭が熱くなる。

「結愛は、俺の大事な人だから。どんなことからも守る」

その言葉が、どんなに嬉しいか。

「社長…私」

「有坂結愛さん、笠原社長の言葉を鵜呑みにしてもいいのかな?」

最上階の社長室前のロビー。

仕事の要件でやって来た、西園寺悠翔。

悠翔は真っ直ぐに私たちを見つめ、そんな言葉を言い放った。