「…社長…良樹さん…ごめんなさい」

素直に謝罪する。

すると、片手で抱いていた手を、両手に変えて、私をぎゅっと抱き締めた。

「…謝らなければならないのは、俺の方だ。結愛は何も悪くない。あれは、西園寺が悪い。それは分かってる。だけど、結愛に勝手に触れたのが許せなかった」

「もう、あの人には、近づきません」

「近づかせない、触れさせない」

お互いの気持ちを確かめ合うように、しばらく抱き合っていた。

…でも。

暗雲から、嵐になるのに、そう時間はかからなかった。