…しかも、重い荷物を持った拍子に、履き慣れないヒールだったせいか、足を捻って、顔を歪める。

「本当大丈夫かい?」

心配そうな顔で、老人が言うが、私は笑顔を張り付けて、頷いてみせた。

この信号を渡りさえすれば。

必死に、信号を渡り、荷物を返した。

…老人は、すぐそこのビルに、用事かあったようで、頭を下げると、中に入っていった。

安堵した瞬間、足に、激痛が走る。

その場にじゃかみこもうとした私の体が、突然フワッと宙に浮いた。

「子供体型の癖に無理するからだ」
「…へ?!しゃ、社長?!」

一体どこから現れたのか。

私は社長にお姫様抱っこされていた。

「お、下ろしてください!見られてます!」
「歩けないやつが何を言う」

…返す言葉もありません。

社長は道端に停めていた車の助手席に私を乗せると、自分は運転席に乗り込んだ。

…自家用車も高級車。流石、社長。

「社長、あの、どちらへ」
「今夜は珍しく早く仕事が終わったから、今から夕飯を食べに行く」

「えっ、じゃあ降ります」

慌ててそう言うが。

「まだ言うか?往生際の悪い奴だな」
「でも、」
「付き合え、後は、送ってやるから」

それだけ言うと、静かに車は走り出した。