女性のことばが頭から離れない。

悶々として、夜になっても、夜中になっても眠れない。

何であんなことを言ったのか?

彼女は社長の恋人の筈だ。

…私は何か間違えているのか?勘違いしてるのか?

着信拒否をした社長の携帯番号を表示させる。

電話なんか出来ないくせに。

私はスマホを机に置くと、ベッドに潜り込んだ。

…そんなときだった。

今は真夜中。

それなのに、インターホンが鳴って、開けることはしなかったが、覗き穴から外を覗くと、そこに居たのは。

「…結愛、そこにいるんだろ?」
「…っ」

私は両手で口を押さえて、ドアを背にしゃがみこんだ。

ドアの向こうに立っているのは、社長。

私は声を圧し殺す。気持ちが溢れだしてそれと一緒に涙が溢れる。

「…結愛、聞いて。…俺は結愛が、結愛だけが好きだから…それだけは変わらない」


「…」

静かな廊下に革靴の音が響き、いつしか消えていて、私は思わずドアを開けた。

居ないのはわかってるのに。

「社長」

ボソッと呟いた。

その声に帰ってくる言葉はない。

私は何を間違えたんだろう?

何を勘違いしてるんだろう。

その夜は、結局一睡も出来なかった。