バタンッ!

気まずい空気を遮るように、勢い良く開いたドア。

「…松木先輩」

一緒に作業をしてくれていた総務課の先輩、松木要(まつきかなめ)。

私は助けてくださいと言うような目で、要を見つめた。

「松木、こんなに小さい新入社員にさせる作業じゃないだろ?」

社長の一喝に、謝罪する要。

「笠原社長。…すみません、急用を頼まれまして。…ごめんな、有坂、それ、俺がするから」

そそくさとホワイトボードの前に来た要は、資料を全てはってくれた。

「ありがとうございます、松木先輩。助かりました」

素直に礼を言いつつも、社長の『小さい新入社員』と言う言葉に、内心イライラしていた。

会議に参加する社員たち用の冊子を配り終えると、会議室を後にする。

その間、社長は無言で黙々と、冊子に目を通していた。

…私、この人嫌い。

でも、社長なので、見てなくても一礼して、私と要は出ていく。

廊下に出た途端、私の態度が気になったようで、要が聞いてきた。

「…有坂、社長となんかあった?」
「…学生に間違えられました。」

不貞腐れた顔でそう言うと、要は、声をあげて笑いだした。

「わ、笑い事じゃありませんよ!気にしてるのに」
「悪い、悪い…有坂はそのままで可愛いんだから、気にするな」

そう言いながらも笑ってる。

全く、人の気も知らないで。

また、私はため息をついた。