いきなり聞かされてどんなに心臓に悪かったことか。

しかも、相手がイケメンの上に仕事も出来ると知って、角川さんにどれだけ羨ましがられたことか。


(奈央ちゃんいいわねーって、あの後ずっと言われ続けて困ったんだからね!?)


次こそは絶対に紹介して!と言われて、まともに仕事にはならなかった。
明日からもきっと言われるんだろうな…と思うと、どうにも気が重くて仕様がない。


どうしてくれるぅ~!と遺影を睨み付け、有り難いけど断るからね!と宣言した。


(兄さんに心配されなくても、ちゃんと立派な男性を見つけてみせるから!)


それに、顔がいい男は大抵が悪い奴だと言ってたのは兄だ。
それなのに、私の彼氏になってくれよなんて、どの口が言ったんだ。


(兄さんの口よね!?飲むととんでもなくお喋りになるこの唇が言ったんだ!)


じーっと見つめ、何か言ってよ!と訴えたくなる。
だけど死人に口無し、今更答えが戻ってくる訳じゃない。


(とにかく明日から暫くの間は我慢だわ。彼とは何の関係もありませんと通して、桜庭さんには兄の言ったことなど気にしないで下さいと断らなきゃ)