それで遅くなってしまったんだ…と話す広大さんの胸に縋り付く。彼の心臓もまだドキドキと鳴っていて、それを聞きながら、その人はどうなったの?と顔を上げた。


「それが幸いにも擦り傷だけで済んでて。ヨロヨロとしながらも自力でバスの足元から這い出して来たんだ。
俺はもうそれを見たら腰が抜けてしまって、膝まで力が抜けて、その場にしゃがみ込んでしまったよ」


それでも、その人の無事を何とか確認したくて話しかけに行ったそうだ。
自分の式もあるというのに、どうしてそんな事までしたのか、自分でもよく分からない…と広大さんは話した。


「その人が謙也に見えてた。それで構わず彼に触れて、温もりを感じたいと思ってしまったんだ」


相手は急に抱き竦められて困惑していたそうだ。
広大さんは何度も「無事で良かった」と彼に言いながら泣いて、「絶対に命を大事にしてくれ」と訴え続けてしまったそうだ。



「もうっ、広大さん…」


そんなお人好しの私みたいなことをして…と思いながらも、彼の胸板に顔を埋める。

体を抱くと彼の心音は少しずつ落ち着き始め、それを聞くと、私も改めて彼がここに居るんだ…と実感が湧いた。