フットワークの軽い平野さんは控え室を出て行き、私の両親と桜庭家の両親は、お互いに険悪なムードを漂わせながらも先のことを話し合い、とにかく時間ギリギリまで待っても来ないようなら、今回の話は一先ず無かったことにしましょう…とまで言い始めた。


「ごめんなさいね、奈央さん。広大ってば、こんな時に遅れて…」


申し訳ない…とお義父さんまでもが頭を下げる。
だけど、私は彼を信じたくて、「絶対に来ます!」と言い張った。


「来てくれます!広大さんは!」


私が信じてると彼はきっと思ってる筈だ。
だから、何があっても必ず、この場所に到着してくれる筈__。


(でも……)


必ず、なんて誰にも絶対言えないんだ。

兄の様に突然この世を去ることだってあるし、明日香さんの様に急に一人ぼっちにされてしまうことだってある。


(だけど、広大さんは私に言ってくれたもん)


自分と永遠に続く恋をして下さい、と。
命のある限り、私を愛させて欲しい…と。


(だから、信じるしかないんだ)


これまでだって、ずっとそうだったから。
結果が駄目だと分かる迄、イライラしても彼氏を信じ続けた。