「ねえ」


「ん?」


グラタンを食べようとしてた彼は顔を上げ、食い入る様に見つめてる私の表情にギョッとする。


「何だよ」


何か不味かったか?と訊き返す彼に、「そうじゃない」と断言し、「後でいいからコーヒーを淹れてくれない?」とお願いした。


「いいけど…家にはブルマンしかないよ」


それでいいか?と問うもんだから、私はやっぱり!と思って席を立つ。


「ひょっとして、桜庭さんはブルマンしか飲まない人!?」


勢い付いて訊ねるもんだから、彼は益々キョトンとした表情に変わった。


「しか…って言うか、まあブルマンが一番飲み易くて好きなだけ」


それが何かあるのか?と不思議がられてしまい、私は椅子に座り直しながら、自分の勘違いをとことん恥ずかしいと思って頰を手で隠す。


「いえ、…何と言うかですね」


自分も海老とブルマンが好きだと言えばいいだけなのに、改めて勘違いだと知ったのが恥ずかし過ぎて、これも全部、兄さんがあれこれとこの人に私のことを話してるからいけないんだ…と逆恨み。