「桜庭さんはどうして私に会いに来たの!?兄さんに私を勧められたからってだけじゃなくて、明日香さんのことを両親に話したくて、それでオフィスへやって来たの!?」


どちらが優先なの!?という思いが胸の中にある。
別にどっちでも構わないのに、出来たら自分の方が先ならいいのに…と願った。


「そうだな。それについてはゆっくり話したいから、車の中じゃ難しいな」


それこそ何処か寛げる場所へ移動しようとシートベルトを締め直す。
私は勿体ぶる彼の行動が気に入らなくて、「じゃあ桜庭さんの部屋に行きましょうよ」と提案した。


「私、もっと桜庭さんのことが知りたいんです」


私の情報は兄によって、彼にはもたらされてると思う。
でも、私が知ってる彼のことは断片的で、もっと深くて、広い情報を知り得たいと思った。


桜庭さんはあんぐりと口を開けて様子を窺ってる。
「早く!」と急かすと「ああ…」と我に返り、エンジンを掛けながらこう言った。


「…でも、部屋に着いたら、何もしないと約束は出来ないよ」


それでもいいのか?と訊いてるようで、私は覚悟を決めて、「構いません」と返事した。