森田さんはグッタリしてて具合が悪そうで、彼が言ってた様に、本当に不眠が続いてるみたいに目の下にはクマが出来てた。



「すみません、ご迷惑かけて…」


部屋に入ると、彼女はラグの上に座って謝った。
桜庭さんはエアコンを点けるとキッチンに向かい、電気ポットに水を入れて沸かし始める。


（手慣れてる）


その後ろ姿を見つめながらやっぱり胸が騒ついた。
兄が亡くなってからこっち、彼はこうして彼女の世話を焼いてたのかもしれない。


「あの…」


項垂れてた森田さんは、囁く様な声を発して顔を上げる。
側で見るとますます綺麗な人だと気づいて、くっきりとした二重瞼もキメが細かくて白い肌も、とにかく何もかもが美しくてドキッとした。


「賢也さんが亡くなってもご挨拶に伺わず……申し訳ありませんでした」


丁寧に手を床に付いて謝り、私はその姿に慌てて、「いいえ、そんな」と恐縮する。


「こっちこそ、生前は兄がお世話に…」


言いかけると彼女はううん…と頭を横に振り、お世話になったのは私の方です、と言い出し、再びぼろぼろと泣き始めた。