「今週は顔を見れなくて詰まんなかったわぁ。奈央ちゃんは週末に彼と会う約束とかあるの？」


あるなら同席したそうな雰囲気で訊き、それをこっちはバッサリ斬り落とす。


「約束とかしてないですよ。あの人は忙しくて、私の相手なんてそうそう出来る余裕もないんだから」


刺々しく言い返すと、角川さんは唇を窄め「そうなの？」と訊いた。


「そうなんです。私以外にも会う女性がいるみたいだし」


イラついて、つい言わなくてもいいことを言ってしまい、ハッとして振り返ると、角川さんはププッと吹き出した。


「なんだ、今週奈央ちゃんがずっとイラついてた原因はそれね。桜庭さんがモテるから気に入らないんだ」


なんだそっか、と笑い出し、まああれだけのイケメンじゃ無理もないわ、と話しだす。


「あの人、顔だけで十人くらいの彼女が同時に居てもおかしくなさそうだもんね。そのうちの特別になろうとしたら、そりゃ苦労も多いでしょう」


「私は別に彼の特別になろうとか思ってないですよ。それに、彼女でもないですから」