本当のお兄ちゃんじゃないんだから、と分かりきったことを言う母に「はいはい」と二度返事してベッドにうつ伏せ、兄じゃないことは知ってる…と不貞腐れながら手を握り、だから混乱したんじゃない…と悔しくなった。


いっそ平野さんが兄なら良かったんだ。

だったら同じ肉親を亡くした者同士、心を慰め合えたかもしれない。悲しくても頑張ろうね…と声を掛け合い、笑って過ごせたかもしれないのに__。



「…ふぅ」


そんなあり得ないことを考えるのは止そうと思い直して起き上がる。これから先のことを思って少し心配し、平野さんは、この家にはもうやって来ないのかな…と考えた。


(そんなの私が気にすることじゃないんだけど)


でも、これまで足繁く通ってた彼が急に来なくなったら、母は私と何かあったと勘繰るんじゃないか。

兄にしても自分が蒔いた種が原因で、私達の関係性が崩れたことを知り、悲しく思ってるかもしれない。


「……だけど、兄さんがいけないのよ」