「この時間、よく見かけてて
一目見て、いいなと思って
なんかもう、そこから
頭から離れなくなったというか………」
てへ、って笑ってるけど
いや何故照れるのよ。
でもこれって……
「つまりは、一目惚れ?」
自分で言うなんて頭おかしいと思うよ?
別に一目惚れされるような容姿でもないし
もしそうなら、等に告白くらいされてるはず。
だがしかし、残念ながら
告白をされるのも初めてなのです。
「はい!一目惚れしましたっ!!
ずっと、話しかけてみたくて
でも勇気が出なくて
今まで声をかけられなかったんですけど」
「……………」
ほ、ほお………。
私、どういう反応すれば良いのでしょう。
「あの、も、もしよかったら
これを機に……………」
と、ここで。
運悪く電車が駅に到着。
ぞろぞろと人の群れが動き出す。
やばっ、乗らなきゃっ!
「ごめん!話の途中で申し訳ないけど
私この電車に乗らないと!」
「え、ちょっ………!
じゃ、じゃあ僕も………!!」
くるり、と背を向けた私の背後から
男子生徒の慌てた声が飛んで来るけど
「空~~~っ!!」
「え、うわっ、ちょっと!」
満員電車に乗り込み、
ホームに視線をやった私の目には
電車のドアが閉まる中
別の男子生徒に腕を引かれ
口をパクパクとさせている彼が映っていて。
悪いことしちゃったかな……。
でも、私も社会人。
高卒の私は、5年前に学生を卒業してる。
あまり関わらない方が
彼のためにもいいのかもしれない。
「空くん…………か」
なんとなく呟いていたのは
耳に届いてきていた、彼の名だった。
