靴を履き変え、校門へと向かう途中。

あたしの歩みが止まる。

視線の先にあるのは、学校が所有するテニスコート。

懐かしくもあり、苦い過去の記憶が胸を締め付ける。

そんなあたしの横を、テニスコートから出て来た男子生徒が通り過ぎる。

あたしも帰ろう。

そう思い、再び歩みを進めようとした。

そんなあたしに、先程の男子生徒が声を掛ける。


「綾瀬?」


懐かしい声に、引き寄せられるように視線がそちらへと向かう。


「・・・樋口、湊(みなと)」

「なんで、絢瀬がうちの学校に?」


動揺しているようで、湊はしどろもどろになりながら尋ねる。

なんでって、今のあたしの格好を見てわからない?

ここの制服を着ているのだから、それ相応に想像は付くと思うんだけど・・・