朝方の4時手前…


コンビニを出て
行くあてもないまま
二人は歩きだした。



「リノちゃん、どっか行きたいとこないの?」


「ん〜そうですね〜」


こんな時間にどこ行きたいか聞かれても…


ただわたしは、タクミさんとこうしてるだけで十分。


「じゃあ俺が決めていい?」


タクミはわたしの自転車を押しながら一歩後ろにいる
わたしのほうを振り返った。


「はいっ。」


タクミと目が合う度、いちいちドキドキする。


「俺、ここ行きたい」




タクミは、ある建物を見上げながらそう言った。














タクミが見上げていた建物は、まさかのラブホテル…



わたしの心臓は爆発寸前だ。


挙動不信になりながらも、タクミが行きたいと言ったこの建物の中に足を踏み込んだ。






男と女がここに入る理由はただ一つ。




二人は自然と体を重ねた。




タクミの柔らかいキスと…
暖かい腕に包まれて…


わたしは
ひたすら運命を感じた。



何の予定もなかったクリスマスの日に…

バイト先に来たお客さんに一目惚れして…

コンビニで再び出会い、

まさか一日で
こんな関係になれちゃうなんて…




やっぱりこれは運命だよね。



そんなわたしは、まさしく幸せの絶頂期に達していたのだ。



その後…

毎日メールは欠かさなかった二人だが、

会える時間は少なかった。


昼間はタクミが仕事で、
夜はわたしがバイト…

要するに、二人が会える時間は、わたしのバイト終了後の数時間。



夜中に行くとしたら
やはりラブホテルになってしまう。


だけどわたしには、
この数時間が何よりも幸せな時間だった。



冬休みが終わり、
新学期が始まった頃には、

昼間は学校…
夕方からはバイト…
夜はタクミ…

そんな生活が続き、わたしにとっての学校は、ほとんどが睡眠時間となっていた。