何故こんな事になったんだろう。




もしかして…ずぶ濡れの女放っておくほど冷めた人間じゃないって言ってたけど、家まで送るのは面倒だから一緒に連れてきたとかそういうパターンなの?




よく考えたら送ってくれるとは言われてない…。





え、嘘、そんな事ってある?




呆然と梓の背中を見つめていたはずなのに、いつのまにか梓はエレベーターに乗っていたらしく「おい」とあまりに低い声で言ってくるもんだから、ビビった私は急ぎ足でエレベーターへと駆け込んだ。




エレベーターは7階のところでライトが点滅すると、チンっと軽快な音を立てて停止する。





降りて行く梓に続いて私も降りると、一番はじの角部屋の前で足を止めた梓は鍵穴にキーを差し込むと、そのまま玄関を開いた。





下駄箱の上に家の鍵が乱暴に置かれ、そして玄関の灯りを付ける。




私…どうしたらいいの…と玄関前に立ち止まっていると「寒いから早くしろ」と言われ、仕方なく玄関の中に入ると扉を閉めた。





てゆうか、思ったんだけど…こんな夜に人の家にお邪魔するのって物凄く失礼じゃない…?



人の家に行った事がないから良く分からないけど、家の人だって困るでしょ…




「あの…私やっぱり帰ろうかな…」




「は?」




「こんな夜にお邪魔したら家の人に悪いし…」




「いねェよ」




「え?」




「一人暮らしだから、俺以外誰もいねェ」