それは余りに予想外の言葉で……




まさか梓にそんな事を見透かされるとは思ってもみなくて。





「さっさとしろ、風邪引く」





いつのまにか梓が持っていたメットが無理矢理頭に被せられ、グイっと私の腕を引きバイクの後ろへ乗るように言われる。





「………」





まだ会って間もないのに、それどころかちゃんと話したのは今日が初めてなのに。




きっと聖にだったバレてない。私がこんな気持ちだっていう事は。本当は黒くて真っ暗でどうしようもない人間だってことは。
それなのに……




バイクの後ろへと跨ると、しっかり捕まるように言われて梓の身体に腕を回す。





「落ちんなよ」





雨が互いの皮膚をスルリと抜ける。





いつのまにか冷えてしまっていたらしい身体だけれど、しがみ付いている梓の背中からは温かい熱が伝わってきて…何故だかやけに落ち着いた。





「…ありがとう」





そう背中で呟いた私の声が梓に届いたかは分からない……






本当は一人が嫌いで、ずっとずっと苦しくて…夜の道なんて歩きたくなくて…それでも消えてしまいたいと願わずにはいられなくて…





だから梓を見た瞬間、まるであの白銀の髪が、私を光の中へと呼んでくれているような感覚がしたんだ。