しばらくして、聖は会社の為の挨拶周りに行ってしまい私は一人になる。





何をするんでもなく、ただ端の方でボーっとしていると…何だか感じる複数の視線。





何人かのおば様達が私を横目にコソコソと話している。きっと両親の事を知っているんだろう…




可哀想とか、不憫だとか…今まで何度も言われて来た。




でもそれは他人からしたらただの同情で…誰も私の心に寄り添おうとそんな言葉を吐き出している訳じゃない。




くだらない。





私は持っていたグラスを近くのテーブルに置くと、預けていたバックを受け取りそのままホテルを出た。





外はいつのまにか雨が降っていて、夜の暗い空をさらに深い色へと変化させている。




私に気が付いたらしい運転手さんが声をかけてきたけれど、私はそれを断って歩き出した。





冷たい雨がドレスをスルリと抜けて背中へと伝わりシミを作る。もう夏も終わりだというのに道路の上は意外にも蒸し暑くムンっとしていて、湿度を上げているようだった。





履き慣れない靴を履いて




好きでもないドレスを着て




自分じゃないようなメイクをして……






私、何してるんだろう。