7時半になって三人は家を出た。


佑衣は最後までここにいるとダダをこねてたし、悠真は心配気に何度も体調を確認してきた。


琉聖はそんな二人を黙々と見ていただけだけど、家を出る間際「何かあったら電話しろ、すぐ来るから」と言って出て行った所を見ると、本当に心配してくれてたんだと思う。



一時間目が終わる頃、悠真から心配のメールが来て。二時間目が終わる時には琉聖から連絡が来た。



そして…昼休みには……



何度も何度も鳴り響く携帯。



それに出たい気持ちと、出たくない気持ちが交差する。



だけれど、琉聖や悠真のは返信を返しているのに出ないのもおかしいし…あまりに何度もなるものだから携帯を手に取るとゆっくりとボタンを押した。



「はい」


少しした沈黙のあと、低くて心地の良い声が私の耳を支配する。




『体調、大丈夫か』



何故こんな優しい言葉をかけるんだろうか。
それに…私達は今とてもすごく微妙な状況で、距離を置こうと思ってたくらいなのに。何で電話してくるの……梓。



「平気、後は寝てれば治りそうだから…」




声なんて聞きたくなかった。
そうしたら、時間が経って…時が流れて…この気持ちも薄くなるかもしれないのに。



『悪い』



いきなりそう呟かれた言葉



それは背景の音もなくポツリと私に届いて、そして消えていく。