心配そうな顔をした悠真が出て行った後も、やはり数分間気まずい雰囲気が室内を包んでいた。



だけど、そんな雰囲気を崩したのはまさかの彼女の方で…



「名前聞いても良いですか?」



高くて透き通った女性らしい声が印象的だった。



「あ…間宮莉愛です」



突然の質問に、驚きながらもそう返す。



「莉愛ちゃんか、可愛い名前」



ニッコリと微笑みながら長い髪を耳にかける。
その仕草さえ優雅だ。



「いえ、そんなこと…朱音さん…ですよね?」



視線をそらしながらそう聞くと、彼女は少し驚いた表情をした後目尻を下げて弧を描くように笑う。



「知っててくれたんだ。朱音です、よろしくね」


「はい、よろしくです」



まさか彼女とこんな風に話すことがあるなんて。
しかも…昨日の今日でこんな……


「莉愛ちゃんは、いつもここに来てるの?」


「あ、はい…」


「そうなんだ、私は今日初めて来たの」



初めて来たんだ。てっきり来た事があるのかと思ってた……